公開講演会「西洋中世史料の世界:『西洋中世文化事典』の、さらに向こう側へ」
INFORMATION
2024年12月、西洋中世学会編『西洋中世文化事典』(丸善出版)が刊行された。本書は、およそ西暦500年から1500頃までのヨーロッパ半島の文化を、歴史?文学?美術?思想?音楽などの専門家が合計296の項目で論じた、世界でも類例のない「読む」事典である。21世紀の日本でこのような事典が実現した理由の一つに、この時代の人々が残した史料が、とりわけ戦後の碩学らによって、次々に日本語に翻訳されてきたことを忘れてはならない。我々が親しんでいるアーサー王物語やダンテのような中世文学、アウグスティヌスやトマス?アクィナスのような思想テキスト、ゲルマン法や公会議決議などの規範史料に加えて、近年、従来では顧みられなかった歴史書が次々に翻訳刊行されるようになった。10世紀ドイツの年代記作家メルセブルクのティートマルによる中世ラテン語の『年代記』や、12世紀のビザンツ皇妃アンナ?コムネナによる中世ギリシア語史書『アレクシアス』はその最たるものであろう。本講演会では、これらの翻訳に携わった西洋中世研究者による講演とディスカッションを通じて、西洋中世史料の世界の魅力、さらには日本における翻訳文化の特徴や可能性も考えてみたい。
講師
大阪市立大学名誉教授
井上 浩一(いのうえ こういち) 氏
専門はビザンツ帝国史。『生き残った帝国ビザンティン』(講談社学術文庫、2008)、『ビザンツ皇妃列伝』(白水社Uブックス、2009)、『歴史学の慰め:アンナ?コムネナの生涯と作品』(白水社、2020)など著書多数。ビザンツ時代を代表する中世ギリシア語史料であるアンナ?コムニニ(相野洋三訳)『アレクシアス』(悠書館、2019)やニキフォロス=ヴリエニオス『歴史』(悠書館、2024)にも解説を寄せる。
東海大学文学部教授
三佐川 亮宏(みさがわ あきひろ) 氏
専門は中世ドイツ史。『ドイツ史のはじまり』(創文社、2013、第108回日本学士院賞受賞作)、『紀元千年の皇帝』(刀水書房、2019)、『オットー大帝』(中公新書、2023)など著書多数。『オットー朝年代記』(知泉書館、2021)のような初期ドイツ時代を代表する中世ラテン語史料も多数翻訳。
慶應義塾大学名誉教授
松田 隆美(まつだ たかみ) 氏
専門は西洋中世文学。『貴重書の挿絵とパラテクスト』(慶應義塾大学出版会、2012)、『煉獄と地獄』(ぷねうま社、2017)、『チョーサー『カンタベリー物語』』(慶應義塾大学出版会、2019)など著者多数。『西洋中世文化事典』編集主幹。